2024.07.12
CEO 鈴木 祐一郎
「心をデザインする。」という考え方
ローカルブライトを設立するまで
スポーツに打ち込んだ学生生活と、社会人1年目にして訪れた最大の転機
私は山形でスポーツ用品店「富士スポーツ」を営む両親のもとに生まれた。スポーツ店で生まれ育った影響かスポーツバカな子ども時代を過ごした。山形南高校を経て、明治大学商学部を卒業後、大手飲料メーカーに就職。対卸業者の営業として社会人生活がスタートした。
転機が訪れたのは社会人1年目、営業として働き始めたばかりの夏のこと。母が末期のがんで余命半年と宣告を受けた。
あまりにも突然のことで、最初は動揺していた。一方で、抗がん剤が効けば、実は大丈夫なんじゃないかとも思っていた。でも万が一のことがあったら、近くにいれなかったことを後悔すると思い、私は山形に戻ることを決めた。その後病床の母から仕事のことの引き継ぎを受け、そして宣告通り半年後に母は亡くなった。当時は悲しみに暮れるというよりも「やるしかない!」という気持ちが強かった。母が生きたかった人生の分も俺が生きてやる。そして母のすごさを証明するには、母が大切にしていた「人を大切にする」を自分が引き継ぎ、実践することが一番だと思った。その時、本気の覚悟が決まった。
「富士スポーツ」でのEコマース事業が評価され、ふるさと納税支援へ
私が帰ってきた頃の富士スポーツは、大手量販店の進出の影響などもあって状況は非常に苦しく、何か手を打たなければならない状況だった。一方で、大学時代から様々なリサーチをする中で、県内のほかのスポーツ店が、ネットショップで売上を伸ばしていることを知っており、ネットショップに可能性を見いだしていた。そこで私が帰ってきてすぐに取り組んだのは富士スポーツでもネットショップをオープンすること。 ネットの可能性を本気で信じていたし、「ほかのスポーツ店には絶対に負けたくない」という思いで必死にネットショップを学んだ。 その時の努力が次第に実を結び、富士スポーツの売上の多くをネットショップが占めるようになった。現在では実店舗(村山店)の10倍以上の売上を上げている。
その後2017年にローカルブライト 現・取締役COOの五十嵐が富士スポーツに入社。そして富士スポーツでのネットで売る力が評価され、2019年10月に村山市のふるさと納税支援事業を受託した。初年度は半年間で楽天のみの支援だったが、当初4.4億円だった寄附受付額を5.7億円に伸ばした。二人三脚でやっていた五十嵐の能力の高さと相性、そしてこれからのふるさと納税事業の可能性をにらみ、ふるさと納税に注力できる体制をつくろうと、2020年8月ローカルブライトを立ち上げた。村山市の実績は、2023年度で22.6億まで伸び、支援開始時から約5倍に成長している。
「心をデザインする。」という考え方
ただお金を稼ぐことならいくらでもできるかもしれないが、私はそれより大切なことがあると思う。私と共同創業者の五十嵐はそれぞれ持ち味は違うが、心の根底にある「大切にするもの」が一致している。たとえば、興味があるのは「モノ」ではなく、「体験」や「人の気持ち」。だからローカルブライトも創業時から、人の気持ちに寄り添うことを極める会社にしたいという想いが私たちの根本にはある。
私が山形に帰ってきて強く感じたのは「田舎には優秀な人材がいない」のではなく、「優秀な人材を生かす環境が無い」と言うことだ。才能のある人材が、不平不満を言いながら暗い雰囲気で、しかも低所得で仕事をしている。こんな光景が田舎ではそこかしこでみられる。私はやりがいを持ってできる仕事でないなら、すぐにやめたらいいと思っている。でも他に行っても一緒だから、我慢するか県外に行くしかないのが実情なのだ。
それなら自分が理想の会社を作ればいいんじゃないかと思った。社員がみな目を輝かせて働き、人の気持ちに寄り添えるメンバーが集まるチーム・会社ができたら、これは最強だと思う。五十嵐ともこういう話を何度も繰り返し、ローカルブライトの基本的価値観を徐々に言語化していった。
それが、私たちが最も大切にする考え方「心をデザインする。」である。 私が考える「心をデザインする。」は、人にいい影響を与える確率を上げること。置かれた状況を良い方向に持っていくためにはどういう対応がいいのか。答えは1つではない。大抵の問題は、色々な要因が少しずつ影響しあって起こっている。自身や相手、組織の問題やタイミング、時代や環境など。それに対して、どんな解決策がとれるのかを考える。
私はローカルブライトの社員には常々「いざという時に1つ2つしかアイデアが出ない人ではなく、10~20個のアイデアから選べる人になろう」と言っている。瞬時にたくさんの可能性が浮かび、その中でどの選択肢が、相手や自分の心をデザインできる可能性が高いのかを見極めて行動する。これが良い影響を与える可能性を増やすということである。これを毎回、毎日繰り返すのが、ローカルブライトの「心をデザインする。」という考え方だ。
お金を稼ぐだけなら、成功パターンを仕組み化して、メンバーを思考停止状態にして「イエスマン」だけを育てていけばできるかもしれない。でもそれをやって何が楽しいのか?と思う。「心をデザインする。」にゴールはない。みんなが本当に生き生き働くためにはどうしたらいいのかを、本気で、まごころを持って考え続ける必要があると思う。
これからのこと
“ど田舎”にあるローカルブライトで輝ける人・チャンスをつかめる人を増やしていきたい
これからのローカルブライトには無限の可能性を感じている。 しかし現状は、複数の自治体からのふるさと納税のコンサル依頼も、企業からのデザインやデジタルコンサルの依頼なども、数多くいただいているが、ほとんど断ってしまっている。キャパシティー以上の仕事を抱えて、クオリティーを落としては本末転倒だからだ。しかし同時に、依頼いただいた方々の想いに応えられていない状況は打破すべきだとも思う。まずはこれらを全て引き受けられるような体制を整え、志を共にできる仲間をどんどん増やして行きたい。
数年後にはローカルブライトを100人以上の会社にしたい。単に大きな会社にしたいということではない。心をデザインできる人材、もしくは心をデザインするに本気で取り組もうとする人材が100人以上になれば、もっともっと周りにいい影響を与えられると思っている。
まずはしっかり事業を成長させる、賃金を大幅に上げる、優秀な人材を採用する、そのメンバーが地元にいい影響を与える、という循環ができたらと考えている。
また地元の才能を持った人材が活躍できる環境作りも着実に進めている。ローカルブライトには、全国的に最前線で活躍してきたメンバーが集まってきている。そういったメンバーと地元採用の若いメンバーが出会うことで刺激となり、ひとりひとりの能力が爆発する。東京の大企業に行かなくても、“ど田舎”にあるローカルブライトから、全国や世界に向かって輝ける人をどんどん増やしたい。
私は4人の息子がいるが、できれば全員経営者になってほしいと思っている。それは社員に対しても全く同じ。経営する側の立場になると物の見方が全く違ってくる。物事を“大きく”考えてほしい。そして他責ではなく自分で責任と覚悟を持って生きてほしい。
人間は根本的には能力に差があるのではなく、覚悟力に差があるのだと思う。そういう意味で、私自身は責任と覚悟が求められる経営者という立場にやりがいを感じている。
これからもずっと何かにチャレンジする人間でありたい。チャレンジの先に新たな世界が見えてくるものだ。小さいことにとらわれず、自分がやりたいと思えることを全力でやっていきたい。自分がそうやって行動することで、周囲に「いい影響」を与えて、それを刺激として受け取った人がチャンスをつかみ始める。私はローカルブライトを通して、そんな人を増やしていきたいのだ。